これはよくあるケースだと思います。

毎日デイリースクラムもうまくやれているし、だんだんチームがアジャイル(Scrum)に慣れてきたかな・・・というタイミングで、スクラムマスタやリードディベロッパーがお休みで不在だったりすると、デイリースクラムがスキップされる。いつものデイリースクラムの時間に集まった人も、誰も発言をしないで、自然に「今日はしなくていいよね」と解散になる・・・なんということでしょう?!チームはアジャイルに慣れてきたのではなかったのか?!

これは、チームが Scrum のイベントを定義の通りに行えるようになってきたとしても、それはメンバーが全員スクラムを理解しているわけではない、というのが重要なポイントかと思います。

はじめてScrumに取り組むメンバーは、むしろ、「スクラムのルールどおりにやるのが仕事」という捉え方をしていて、従来のウォーターフォールなどで上司・上長にちゃんとやれていることを「見せる」のが重要だったのと同じように、新しいやり方でも、スクラムのルール通りにやれていることを管理者に見せるのが重要。つまり、スクラムの管理者がいなければ、それをやらなくてもいい、と認識している可能性が高いと思った方が良いように思います。

Scrum では、チームメンバーの自律的に自己管理することを期待しています。スクラムマスタやスクラムチームを支える外部のリーダー・マネージャ的な人は、チームメンバーを管理するリーダーではなく、サーバントリーダーシップによってチームメンバーが自律的に動けるように支援します。チームメンバーは、スクラムガイドにあるようなスクラムの3つの柱(透明性、検査、適用)や5つの価値基準(確約、集中、公開、尊敬、勇気)を理解して、自分たちで判断して行動します。それらをちゃんと理解して行動していれば、スクラムマスタが休みなぐらいでデイリースクラムを実施しないなんて、あるわけがないので・・・つまり、そういうチームではスクラムをちゃんと理解しているわけではなく、ルールだからやっているに過ぎなかった、ということです。

Scrum.org スクラムガイド(日本語ダウンロードできます)

このようになってしまうことを避ける意味でも、スクラムマスタがデイリースクラムのファシリテーターをすることは、私はお勧めしていません。

もちろんリモートワークの都合もあって、デイリースクラムのファシリテーターを立てる必要がある、というのは当然あるのですが、毎日同じ人がファシリテーターをやっていると、その人が「スクラムの管理者」であるような印象を与えてしまいます(もちろん、スクラムの管理者という役割はありません)。そうして管理者に報告する会というイメージが定着すると、それを取り除くのはなかなか難しいように思います。

また、純粋に毎日同じ人がファシリテーターをやっていると、普段ファシリテーターをやっていない人は、代わりにやる能力が身につかないということがあります。単純に、Azure DevOps のカンバンボード(Boards>Sprints) を開く方法がわからない。それを画面共有して会議の参加者に見せることができない。普段質問に答えることしかしていないので、自分からは何を話していいかわからない。という、経験不足のためにできない、ということがあるはずです。こういう何気ないことも、普段やっていないと、いざやろうとしたときにできない。それが怖くて「じゃぁ、スキップで」と言いたくなってしまう気持ちもわかります。

もしホワイトボードに付箋を貼るタイプのカンバンボードを使うデイリースクラムであれば、ファシリテーターを立てずに、開発者がそれぞれにタスクについて話せるような雰囲気でやれるといいのですが・・・今は、リモートワークと画面共有の都合があるので。せめてファシリテーターや画面共有をする人は、開発者で持ち回りにするのが良いのかもしれません。

そして、もしこういうことがあっても落胆しないで、レトロスペクティブでチームメンバーみんなで本当はどうするのが良かったのか?を話して「検査」と「適用」を繰り返していく。Scrum を理解してやれるようになるには時間がかかると覚悟しておく必要があるように思います。